アレキシス・カレル博士、1937年の著書であるが、将来を見越した、現代にも通じる卓見を披露している。
「人間、この未知なるもの・渡部昇一訳」
「長寿は果たして望ましいか。
人はこの目的(長寿)のためにやみくもに薬を使う方法に頼りたいと思うものだが決してその誘惑に負けてはならない。
長寿は、若さが長く続き、老衰が続くのでないときだけ望ましいもの。そうでなければ不幸であり、家族、社会にとって負担である。
もし多数が今の状態で100歳まで生きるようになれば、若い世代はそんな重荷を背負いきれない。病人、寝たきり老人、虚弱者、狂人を増やさないことが極めて大切である。
全員に等しく長命を与えることは賢明でない。不幸な人、利己的な人、役に立たない人の命を何年か延ばす必要があるだろうか。
人間が老年期における知的、道徳的衰えと、長患いを防止できるようになるまで100歳以上の人数を増やすべきでない。」
現代だと、若干言い過ぎといわれそうな表現もありそうだが、人の顔色を伺うことなく、問題の本質をビシッとついた卓見である。