秋の詩

秋は足早やに去ってゆく。

最近はカレンダーの枚数が気になって、せっかくの秋なのに下記のような透明な気分とは程遠いのが残念だ。

秋来る (竹内てるよ 詩文集より)

空につばさの白いわたりどりが 

ひっそりとわたってゆくころとなった
日にまし 冷たい風に 犬たでの花が 咲いてゆれる

亡き祖母の形見の花筒を出して 

一人静かに桔梗の花をいけていると 

暗い部屋の中に濃いむらさきの花は
歴史が残した数々の女性のように深い

ああ 今年もまた静かに秋が来る
私は 何一つしてはいないけれども
心だけは 清くこの一年を生きた

空が美しく晴れた日が続く 

とおい地平線のうろこ雲
すすきの銀 かやのみどり

黒髪を解き ひとりたそがれの部屋にいると
月は東方の森に明るい その深くうるわしい光には
永久の物語がある

ああ 今年もまたしずかに秋が来る
私は 何一つできないけれど
心だけは 乱さず生きようと思う