昭和ノスタルジー(2)

前回はほうろう看板について書いたが、実は私にとってはとっておきとでも言うべき昭和懐古物がある。それは「名曲喫茶」。

昭和40年代、私が学生の頃隆盛を極めた。コーヒー一杯で一日中粘れる。ただし、薄暗い空間でひたすら静かにクラシックの名曲を聞くだけで私語はご法度である。そのかわり飛び切り上等のアンプとスピーカーで最上級の音が楽しめる。自宅に上等のステレオ再生機をもてない学生が大部分であった時代、名曲喫茶が、安価にクラシック趣味を満たす唯一の場所だった。さんざん名曲喫茶に入り浸ったあと就職してしまうと、そんな優雅な時間をもてるはずもなく、当然の如く足が遠のかざるをえなかった。そして、気がついてみると、古の名曲喫茶スタイルは過去のダサいものとみなされ淘汰されて跡形もなく消え去っていた。同時期にはやった「歌声喫茶」も同じ運命をたどった。いまや聞くのではなくカラオケバーで蛮声奇声を張り上げるのが当たり前の時代。

と密かにぶつぶつ嘆いていたら、なんとまだ絶滅危惧種として都心に生息していた。その極めつけがあの渋谷道玄坂に生息する名曲喫茶「ライオン」。いにしえの伝統的スタイルを頑固というか愚直というかしっかり守って営業している。だから外観は何の店だか判然とはせず、一見さんにはかなり敷居が高いはずだ。これを知ったのは10年ほど前。ありがたいことに今なお生存中。なんか、今再び静かに名曲喫茶ブームが沸き起こっているそうだから長生きはしてみるものだ。その証拠に2010年以降名曲喫茶スタイルの喫茶店が結構新たに立ち上がっているらしい。

「ライオン」ほどのスタイルのこだわりはないが、都心にはほかにもあることを知った。新宿、本郷。

そして面白いことに、高円寺、吉祥寺、荻窪、阿佐ヶ谷、国分寺、国立の中央線沿いの街に点在している。中央線の文化度の高さはこういうところにも見て取れる。言っちゃ悪いが、北上するにつれ程度は下がるようである。西武池袋線(東久留米のある線)は大分落ちる感じがする。

では、ネットでの紹介記事を見てみよう。

渋谷の名曲喫茶ライオンは、おひとりさまでも気兼ねない喫茶店 - 北欧、暮らしの道具店

見せかけのおしゃれとは違う、本物の異空間へ。今「名曲喫茶」が静かなブームなんです | キナリノ

名曲喫茶 月草

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ネットから珍しい花、お分かりですかな。

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