在宅で終末

数日前のNHKTVで「大往生」という番組が放映された。80歳の老医師の近隣終末患者の訪問医療の密着取材である。この医師の所属する病院が実は隣町新座市にあり、見慣れた光景が映っていることも興味をひかれた理由である。そこは、毎月のオカリナボランティア訪問先の対面でもある。

この番組を見て第一に感じたことは、やはり家族にとって在宅終末介護は極めてハードルが高いということである。国の方針は在宅志向で病床数の削減を目論んでいるが、なかなか現実的ではないなと感じた。なぜなら、在宅終末が可能なためにはいくつかの条件がそろう必要があるからである。たとえば、①十分な自宅のスペース②介護家族の存在③訪問医師の存在等々。

まずもって一人暮らしが多いし、幸い家族がいてもその介護家族のロードは並大抵のものではないことが映像からひしひしと感じられる。番組を見て腰が引ける人も多かったのではないか。それと定期的、さらには突発的事態のとき訪問してくれる医師の存在。これが一番のネックに思える。ちゃんと調べたわけではないが、人口13万の東久留米市でも往診する医師などほとんどゼロに近いのではないかと思う。なぜ少ないかというとキャリアアップにもならないし待遇もよくなさそうだからである。この新座のお医者さん(森鴎外の孫)ももとは外科医で終末期訪問医療を志したのは定年後の67歳である。つまり、若いお医者さんにとっては魅力のない職なのである。この老医師の活動がTV番組になること自体、その希少性を物語っている。

政治にお願いしたいのは、終末在宅医療志向という看板だけでなく、実現可能な中身をしっかり吟味して充実させてほしいということである。訪問医師の大部分が余生の余技では心もとない。まぁ、言うだけ無駄だろうけど、いちおう感じたことを言っておきたい。