脳梗塞の特効薬

近年脳の血管が破れて出血する病気、脳出血が減ったそうです。理由は栄養状態の改善。

その代り増えてきたのが脳梗塞、つまり脳血管の血栓による閉塞。脳梗塞も後遺症を伴う致命的な病気であるが、最近「t-PA」という名の特効薬ができて、薬だけで血栓を溶かし大した後遺症もなしに全快するようになったとのことである。ただし発症後4時間以内の注入が条件なので、おかしいと思ったら即救急車。

ありがたいことに、この血栓溶解の成分は体内で随時作られている。そして、日常の有酸素運動で量が倍増するということなので、毎日何千歩か万歩かしれないが歩いていれば、歩かない場合に比べて何倍も脳梗塞リスクが減る。(以上NHKTV「ガッテン」)

さて、この薬は一瓶何十万円という高価な薬である。幸いなことに我が国においては、薬効さえあれば薬価を理由に保険適用を除外されることはなく、どんな患者も平等に最適治療を受けることができる。

私たちはこれを当たり前のことと思っているが、実はそうではなく、例えば米国では今これが大問題になっている。

もともと米国には、日本のような公的な皆保険制度がないので民間保険頼りだが、掛け金が高額すぎて貧困層は入れない。かといって自費ではなおさら医者に行けないので、拡大する貧困層の無保険、無医療が大きな社会問題になってきた。

これを解決しようと、オバマ大統領は昨年「オバマケア」と称する低所得者、高齢者向けの公的医療保険を作って加入を義務付けた。発想はよかったが運用が中途半端なために致命的な問題が続出した。一番の問題点は、公的資金不足を理由に、オバマケアの大半を民間保険会社に任せてしまったことである。

その結果どうなったかというと、医療が商業ベースで適用されるようになってしまった。つまり、診療の主導権が医者ではなく保険会社に移って、損得勘定で行われるようになった。その結果たとえば、業績の悪化した保険会社は高価な医療の実施を拒否するようになった。t-PAのような高い薬は自費でやってくれとなるかもしれないということである。実際に、オバマケア以降、医療費が払えなくて自己破産になる人が急増という信じられない事態になっているらしい。

これは、対岸の火事だろうか。実はそうではない。今発効しようとしているTPPにその危険が潜んでいる。米国の巨大保険会社が次の標的にしているのがまさに日本の公的医療保険といわれているから。

TPPの貿易自由化の大義名分のもとに、米国でやったように日本の医療保険に参入しようと狙っていることは十分考えられる。日本政府にはぜひこの一線は死守してもらわねばならない。

貿易自由化、グローバリズムというスローガンに騙されるとろくなことはないことはこの20年日本社会は苦い経験として学んだはずだ。すなわち、一億非正規労働者化と貧困化。汝、再度同じ轍を踏むなかれ。

施行から1年…米国の皆保険制度「オバマケア」の悲惨な現状 - NAVER まとめ