ついにうちにも

詐欺師から電話がかかってきた。ただし、稚拙な内容だったのでひっかかりようがなかったが。なんかこれでうちも世間一般に言われているところの、詐欺師に目を付けられる人並みの存在になったのかなと感慨深いものがあった。

古典的手法は「オレオレ詐欺」だが、うちには「オレ」の存在がないので掛かってこない。プロの詐欺師たるものさすがにその辺の基本情報の入手は怠りないようである。息子は居たが、カナダへ転勤時同行させたので、高校中退のため日本高校の卒業名簿に名前が載っていないのがその理由だと思う。おまけに、7年前カナダで潜水事故死した。だから、もしうちに「オレオレ」電話がかかってきたら、天国何丁目からおかけですか、と間抜けな質問をしなくてはならないのである。

もう一つの手法は、公的機関である市役所や警察を名乗るもの。うちにかかってきたのはこちらの方で、市役所を騙るものであった。事の発端は、電話で話している妻の、医療費、還付金などの単語をRECOCAがたまたま聞きとがめたことに始まる。それで、「おいおい、詐欺師だぞ、詐欺だ、詐欺だ」と妻の耳元でささやいたら、相手に聞こえたらしく、「うしろで詐欺だ詐欺だと騒いでいる人がいますね、かわってもらえますか」というので私が電話に出た。

詐欺師とのやり取りはおよそこんな感じ。

詐欺師「私を詐欺師呼ばわりするのは失礼ではありませんか。」

RECOCA「あなたを詐欺師とは言っていません。詐欺だ詐欺だと独り言を言っていたのです。けれども世間一般の常識では、還付金がらみの話は詐欺でしょう。あなたの話は還付金でしょう。」

詐欺師「いや、私は還付金とは一言も言っていませんよ。」

RECOCA「そうですか。それではさっき妻に話したことをもう一度聞かせてください。」

詐欺師「繰り返すと話が長くなるから電話ではやめておきます。市役所の窓口に来てください。」

RECOCA「そうですか、ではそうします。市役所の何課ですか。あなたの名前は?」

詐欺師「〇〇課の△△です。」

なぜ、すぐにばれる、市役所窓口を持ち出したのかは分からない。騙すのをあきらめて、自らの体面を保って通話を終えたかったのかもしれない。

市役所に電話したら△△という人はいないし、還付金と聞いたら詐欺と思ってください、とのお達し。一応警察に知らせた方がいいと思い通報しておいた。警察官の係を派遣しましょうかといわれたが、それほどでもないし、来訪者が本物の警官か信用できないのでお断りした。警察からの強いお勧めは常時留守電作戦。しかし妻は電話が命の次に大事なので、うちではこの作戦が実現したためしがない。

参考のため、妻が聞いた詐欺師の話を紹介しておく。

詐欺師「市役所のものですが、お宅に医療費の還付金が出るのでお知らせします。去年の12月に通知文書を出していますがご覧になっていませんか。手続きの返答未着の人が200人いるので順番に電話しています。内容は、お宅の医療費の2年間の合計が基準を超えているので2万円ほどの還付があるというものです。」

妻の名誉のために申し添えると、本人曰く全部信用していたわけではない、ATM操作とか個人情報の話になったらすぐに切るつもりだったとのこと。普段市役所の公園課との付き合いがあるので、万一本物の市役所職員だったらまずいということで、明確に詐欺師と分かるまでは丁寧な応対をしたのだとのことである。なるほど、ぼけていなかったことが分かりまずは一安心。