新聞投書から

昨日の朝日新聞読者投書欄「声」に、開業医と大病院(専門病院)との連携の不備を訴える投書が載った。RECOCAも前々からおなじような感じを抱いていたので考えてみたい。投書は次のように述べている。

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投書の例は、紹介状制度の不備がとても気の毒な形で表れてしまった例だと思う。根本的な原因は開業医の、家庭医としての技量不足である。投書のように小児科、眼科とたらい回しになってしまうのは、入り口で一元管理できる家庭医がいないということ。自分の得意分野を少しでも外れると他へ回してしまう。それが的確ならまだしも見当違いの診断で関係ない専門医に紹介してしまう。投書に記載されている診断で、素人がみてもおかしいと思えるのは、頭痛吐き気に加えて視覚障害が現れているにもかかわらず脳神経疾患を第一選択肢にしなかった眼科医の判断だ。頭痛・吐き気・視覚障害とくれば脳神経系疾患を疑うのは、それはもう常識でしょう。

RECOCAは仕事でカナダに滞在したことがある。カナダでは徹底的な家庭医制度登録制がとられており、患者は症状、疾患部位に拘らずまずその家庭医に見てもらう。家庭医は非常に高度な総合医療の専門教育を受けており、日本のように、自分の専門は脳外科だが患者が多そうだからとりあえず内科の看板でも出しておくかという「でも内科医」は存在しえないのが大きな違いである。

日本で開業医と大病院の役割分担が取り上げられた発端は、大病院における3分診療3時間待ちの弊害からであった。なぜそうなるのか。開業医が総合医療を知らず頼りないからに他ならない。そこのところをきちんとケアしないで単に家庭医制度だけ真似しているのが日本の現状である。仏作って魂入れず。たとえば医学部で総合医療の訓練はゼロだし、開業医としての臨床訓練もゼロ、ただ博士論文を書くことだけが医者の勉強だと思っている。今の開業医でさらに問題だと思うのは、紹介してくれるのはいいが、紹介先が必ずしもベストと思えないことである。黙っていると医者と懇意な病院に入れられてしまいがちに見える。患者が、ここへ紹介状を書いてくれ、といった場合どうなるのか知りたいところである。

今のところ結論として言えることは、大病院は紹介状なしの患者をやみくもに拒否する制度ではないことを有効活用することだろう。少しでもおかしいと思ったら、初診料五千円か一万円払ってでも、自分が目を付けておいた専門病院に紹介なしで飛び込むことだろう。