バラシリーズ・その5

今回はアイルランドの歌、夏の名残のバラ(The last rose in summer)です。でも読者のみなさんの多くは、庭の千草という題名の方が馴染があるのではないですか。

もともと、アイルランドの大詩人トマス・ムーアの有名な詩にスティーブンソンという人が作曲した歌です。明治17年に日本に紹介後、小学校唱歌にのせるために内容を似ても似つかないものに改作して、庭の千草として発表しました。当時の常とう手段ですね、夕空晴れてとか蛍の光、星の世界とかもそうです。その結果、あまりにも普及したので日本の歌だと思っている人が多いです。

さて、原詩は咲き残った一本のばらに寂しい自分の行く末を託した物悲しい内容ですが、これを白菊に置き換え、忠義、高潔、貞節を内容とした教育的内容に一変させたのが庭の千草です。

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それは夏の名残のバラ

一輪だけ咲き残る

同じ木に咲いた美しい仲間たちはすでに

色あせて散っていった

(中略)

こうやってお前を手折り

花壇に華を優しく散らしてあげよう

仲間だった花たちが

香りなく散り敷くその上に

間もなく私も後に続くだろう

友情が朽ち去り

そして愛の輝ける団欒の輪から

宝石のような大切な人たちが零れ落ちるその時に

心を許しあった人たちが枯れ果て

愛しき者たちが去ってしまったら

あゝ誰が生きていけようか

この凍える世界に一人きり

    ↓

・・・庭の千草・・・

庭の千草も虫の音も

枯れて寂しくなりにけり

あゝ白菊あゝ白菊

一人遅れて咲きにけり

 

露にたわむや菊の花

霜におごるや菊の花

あゝあわれあわれあゝ菊の花

人の操もかくてこそ

・・RECOCAのオカリナで、夏の名残のバラもしくは庭の千草

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