さいわい農園物語

女房が10月、世にいう記念・節目の誕生日を迎えた。彼女はこの30年あまり、自己の発案で始めたレジャー農園での収穫と管理をライフワークの如くこなしている。この年を健康で迎えることができた記念として、そのいきさつを綴った13年前の手記の一部を転載して祝意を表することにする。なお、この手記は2007年地元情報誌に採用掲載された記事をRECOCAが一部加筆修正したものである。

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      「さいわい農園」物語

私が○○市△△町の「さいわい農園」の管理人を始めたのは28年前の1992年1月です。兼業農家の方の土地約200坪を提供していただいて誕生しました。一区画20平方メートル約6坪で全部で18区画あります。通路は車椅子でも通れるよう広く取りました。井戸、農機具を入れるロッカー、ベンチ、日よけパラソル、テーブルそして、梅、びわ、ぶどう、お茶の木の生垣なども用意しました。

さて、私が農園の管理人を始めた動機は市内で緑地保全をしたいと思ったためです。

というのは、以前カナダのカルガリー市で都市計画による木々の緑たっぷりの住宅地に住んだことがあり、住宅地には緑地がとても大切であることを身をもって体験できたからです。帰国して当地に住み、目に留まった空き地は公園ではなくほとんどが農地でした。

たまたま自宅の庭に隣接している農地が代替わりとなり、地主さんはその後地にアパートや駐車場などを考えておられました。それをお願いした結果、農地のままの継続が実現し、そこにとうもろこし、きゅうり、さつまいもを近所の方と作りはじめました。でもこの広さの畑を少人数で耕すのはとても大変でした。そこで、区画に区切ったレジャー農園にすることを考えました。有難いことに地主さんにも賛同を頂き、ここに「さいわい農園」が誕生しました。

 隣接地に同じ地主さんによる福祉作業所が建てられており、そこの水道を5年間ほどお借りしましたがいつまでもその状態ではいけないと考えて、農園の水を確保するため農園敷地内に井戸を掘りました。たまたま幸運なことに、井戸屋さんが一区画をかりておられたので、早速井戸を掘ってもらいました。その結果、8mの深さで地下水脈に当たったので、手押しポンプを設置しました。これは28年後の今も一部修理しながらですが、立派に機能しています。井戸を掘ってくださった方の話では、近隣でこれまで400本ほど掘ってこられたそうですが。水脈に当たったのはたった4本だったとのことです。「さいわい農園」の井戸はそのうちの一本です。正に「さいわい」の名が功を奏したのかもしれません。井戸水は大腸菌検査もパスして非常時の飲料水にもなります。

 農園の借り手は近隣の方々がほとんどです。でも、中には運動になるからと自転車で20分走って来られる方もいます。最近は若い方や、3世代でされる方、カルチャースクールの農体験用にとジャガイモ、とうもろこし、トマト、ハーブ、すいかなど作る区画もあります。退職後の野菜作りを楽しんでおられる方もいます。

農園で守らなければいけない規則は1.木を植えない、2.隣地に根を伸ばさない。3.区画周りの雑草は各自が取る。4.使用した農具は土を落としてロッカーに戻す。などです。農園周りの草取りやぶどう柵などの世話は借り手の方々が自発的に、協力してくださっています。

収穫は皆でいただいています。この農園の特徴は、「借りての自由な発想での畑作り」です。皆さん、さまざまな野菜作りを試みておられ、無農薬あるいは低農薬野菜作りの実験農場の体をなしています。農園に来ておられる方は、初心の方と超ベテランの方さまざまですが、お互いに教えたり教えられたり苗の交換など、また、一年に一回のバーべキューパーテイーを通して楽しい交流があります。まさに老若男女が楽しめる農園になっています。

緑地保全は厳密に言うと樹木があることですが、いくつかの区画が集まっているレジャー農園は太陽と風の通る良質な緑地といえると思っています。

市内の各地にこのような農園が作られることを願っています。

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レジャー農園全景