「本当は危ない国産食品」これは本当に衝撃の書です。

2020年12月20日発行

奥野修司

新潮新書

f:id:recoca1940:20210110112443j:plain

f:id:recoca1940:20210110112507j:plain

国産食品に残留農薬が蔓延しているという警告書です。主に日本茶、野菜、パン、パスタなど小麦、大豆製品に顕著ですが、飼料を媒介とした肉製品にも要注意。意外だったのは日本茶。ひところ日本茶ダイエットがはやったとき、不思議な神経障害が多発して、多量に飲むのをやめたら回復したという例もあったとか。

さて、日本における合成化学薬品の農薬の歴史を紐解いてみると、まず終戦後前後のDDTBHC。これは有機塩素系で、特徴は猛毒で人体にも中毒症状を呈します。思い出すのは子供の頃の経験です。よく野球のボールが田んぼに飛び込むのですが、絶対に素足で入ってはいけないと厳しく言われました。その頃BHC成分の農薬が盛んに田んぼに散布されていたからです。あまりの強毒性のため1980年代には各国で禁止になりました。

次に出て来たのは有機リン系の殺虫剤。これはナチスが開発したサリンに似た成分です。昆虫の神経系統に障害を起こさせて駆除します。当初は人体弱毒性とされていましたが、子供に強い作用を及ぼすことが分かり、EUでは次々禁止されていますが日本では継続中です。

さて、本書で問題提起しているのは、その次の世代の農薬です。1990年代米国の会社から発売されました。その1.⇒ネオニコチノイド系(略してネオニコ)農薬。発売当初の宣伝文句は「人体に安全な殺虫剤」。有機リン系と同じく、昆虫の神経系をかく乱する作用で駆除します。人体安全の殺し文句のため、家庭用品にも急激に拡大しています。例えば、蚊取り薬、ゴキブリ噴射、公園校庭の雑草駆除・・。ところが世界各地でミツバチが群れごと消えることが問題となり、最近では人間にも神経毒性があることが分かり、EU各国、韓国、ブラジルで禁止されました。ところが日本では逆に安全とされる基準値が緩和されているのです。たとえば、顕著なのは2017年の突然の緩和。何の安全試験もなく数字を意のままにいじくる!なお、下表のグリホサートとはネオニコに次いで現れたもっと強烈な作用の農薬成分です。遺伝子組み換え食品に関係する農薬。

f:id:recoca1940:20210110110228j:plain

なぜこんなことになるのか。誰のための緩和。明らかに米国政府です。米国政府から次々に要求が来ているそうで、日本政府の食品安全審査会の作業はその順番を塩梅するだけだと揶揄されているそうです。軍備が米国頼みだと周辺の食の安全も売り渡さざるを得ないということのようです。実際、この時の担当者はオフレコで、あれはクリスマスプレゼントだったのですよ、と漏らしていたそうです。弊害は明日すぐ出るものではありません。だから分かりにくい。ゆえにあらかじめ用心に用心を重ねて安全サイドに設定すべきなのに逆です。10年前、民主党の枝野官房長官原発事故の放射能に関して「直ちに生命にかかわるものではないから安心して」と繰り返していた言葉がそっくり当てはまります。今日明日が心配の大人や老人ではなく、2017年の10年先、20年先の子供たちがどうなっているかを心配してるのです。今現在すでに自閉症、引き籠り、各種発達障害うつ病が急激に増えつつあります。これらは脳の神経系のかく乱、障害が関係するのではないでしょうか。

野菜編残留農薬の実態は次の表のとおりです。

f:id:recoca1940:20210110112238j:plain

f:id:recoca1940:20210110112344j:plain

さて、ネオニコの次のさらに強烈農薬は、グリホサート(農薬名:ラウンドアップ)です。これは異常に強力な枯葉剤です。作用はネオニコと同じく神経作用のかく乱。人体無害がうたい文句ですが、発売元の安全試験は非常にずさんなもののようです。ラット(ネズミ)の試験では、腫瘍、異常行動、認知症等がみられる。疫学調査では精子数の減少の懸念もあるとか。農薬に暴露し続けると不妊にも繋がりかねない。

さてグリホサート(農薬名ラウンドアップ)は遺伝子組み換え食品に直結するので覚えておいてください。ところで遺伝子組み換え食品、例えば大豆、小麦などがなぜ危険か分かりますか。私はこの本で初めて了解しました。遺伝子組み換え食品に付着するクリホサート農薬なのです。なぜかというと、まず遺伝子操作でグリホサート耐性の小麦、大豆などの品種を作って育てる。そこへ強力除草剤クリホサートをドローンなどでで大量に散布することにより効率的に収穫できます。やっかいなことに、グリホサートやネオニコチノイドは吸収性なので根から植物全体に行き渡ってしまいます。従来の有機リン酸系農薬のように洗えばとれるというものではないのです。ですから、遺伝子組み換え大豆や小麦には必然的に農薬が付着するのです。

輸入小麦のグリホサート検出率

米国=98%、オーストラリア=45%、カナダ=100%、ドイツ、フランス=0

日本の小麦製品24種のグリホサート検出試験

小麦粉=46%、全粒粉=50%、パスタ=100%、マカロニ、シリアル=0

つまり、パンやパスタには要注意ということです。からくりは難しいですが日本蕎麦にも要注意だそうです。多分ネオニコ系農薬が土壌水を経由して浸透するものと思われます。なぜなら、日本における農薬使用量は世界的に驚くほど多量になっているからです。例えば1ヘクタール当たりの農薬使用量を比べると以下のようになっています。

①中国13.07kg、②韓国12.37、③日本11.76、④オランダ7.9、⑤ドイツ4.03

⑥フランス3.6、⑦アメリカ2.54

今に中国を抜いてトップに躍り出る勢いです。これは残留基準値が極めて緩い結果です。例えばお茶7種の残留基準値はEUの1090倍緩いです。本来お茶大量摂取の日本の方が厳しくあらねばならぬのに逆です。野菜もしかり、EUのスーパーでの日本産野菜は有機野菜しかEUの検査基準を満たさないそうです。米国の農薬が少ないですが、これは自国向け。海外、例えば日本向け小麦や大豆だと、「これはジャップが食べる分だからいいんだ」といって農家は意に介さないのだそうです。ですから食料自給率は出来る限り上げて、他国頼みをやめなければなりません。

遺伝子組み換え食品を避けるには、表示を見て避けるしかありませんが、その一番大事な表示義務が2023年から廃止になるとこの本に書いてありました。日本人の健康売渡政策は米国のスケジュール表にのっとって留まるところを知らぬようです。