幸せ度の計測

今の世の中は何でも計測できる世界のようである。私たちが幸福であるかどうかも計測の対象になる。

幸福を感じる指標は人それぞれに違う。お金、健康、住居、家族、友人、職業、職場、それぞれに係るウエイトは人によって千差万別であろう。ここで発想を変えよう。何が幸せかはさておいて、幸せを感じたときに何か共通項がないかと考えるのである。それは無意識の人の体の動きに現れるという視点に注目して、体に装着するセンサーを開発し、15年間データを取り続けた研究グループがあった。日立の半導体研究部である。動きを感知できる加速度センサーを首からぶら下げ、一日の動きをデータ化する。10秒ごとに計測し、止まっていたら「0」、動いていたら「1」。トータルの動きを01001010001のように2進法の数字列で記録するのである。そして研究の結果、人の感情と数字列のパターンに共通項があることを見出したのである。これを武器に、人の幸せの計測をビジネスにする会社を立ち上げた。日立系列の新会社ハピネスプラネットである。顧客の会社社員はウエアラブルセンサーを身につけ、体の動きを01のパターンで記録し、そのパターンがどの程度「幸せ度」を示しているかを判定して顧客の会社のマネジメントに生かすのである。マネジメントがまずいと社員の「幸せパターン」は劣化する。それをみてマネジメントを改良するという双方向の取り組みにより、実際に企業業績が向上する例がいくつか出始めているとのことである。

確かにハッピーだとスキップしたくなるような動きが出るかも知れないし、がっくり来ると動きが止まってしまうということがあるのであろう。人により千差万別の幸福要因を抽象化して人に共通の無意識の動きのパターンに置きかえたのは現代のデジタル世界を象徴する面白い発想であると思った。

追伸

金銭を持つことは幸せの一要因であるが、その金額が幸せ感に比例するのはある一定金額までで、その後は頭打ちだそうである。アンケート調査によるとその額は意外と多くない。米国のある調査では年収800万円とか1700万円という結果が得られたそうである。つまり、自家用機を持つような金持ちでも幸せ感は年収1千万程度と変わらないという調査結果を意味している。だから、億万長者をうらやむ必要はない。しかし、一度なってみるのは悪くない気がする。