「思考停止のがん治療」と題するNewsweek日本語版の記事から

今や日本では二人に一人がガン患者といわれる時代です。できるだけ理想の最高の治療を受けたいですよね。そんな中にあって、現在の日本のがん治療は硬直化してマニュアル通りのベルトコンベア式だと、がん治療を生き延びた実体験に基づいて書かれた記事が目を引きました。この状況を評して、ガン医療のファストフード化といっています。これは言いえて妙だと思いました。私はガンの経験が無いので良く分かりませんが、世界的に標準治療というものがあるそうです。それは大雑把に言うと、まず抗がん剤でがんを叩いてサイズを小さくし、そして手術で除去するという手順だそうです。しかしながら、多くの場合の場合抗がん剤と手術の副作用は並大抵ではありませんね。そのため、ガン療養の場合、こうした治療後に本当の苦しみが訪れるといわれます。つまり、QOLの著しい低下です。昔はとにかく命拾いすれば儲けもので、ほかのことなど二の次三の次というのががん治療でしたが、現代は一歩進んで治療後のQOLをいかに保つかが特に患者側にとっての重要な医療の課題になってきました。

希望のQOLは患者一人一人生活環境や死生観によって違うはずです。従って治療法は患者の希望をとことん話し合って双方納得の上決めるべきで、実際の医療現場でもそうしているだろうと思いきやさにあらず、全くの真逆であるという告発です。ガンのような患者の生死にかかわる重大な病の告知に当てられる時間はわずか10分とか15分そこら、その中で矢継ぎ早に治療方針が示され双方向の話し合いの時間はほとんどないのが普通だそうです。ですから転移の有無とかステージとか予後とか具体的な副作用とか、他の治療法の可能性とかセカンドオピニオンについてとか患者さんの知りたいことは山ほどあるのに、風邪や腹痛の診察のような事務的通告で終わりだそうです。なぜそうなのかという理由も書いてありました。患者へのこうした詳しい説明とか相談時間は保険の点数に入らないからです。そんなことに30分も1時間も時間を取ったら病院は倒産するとインタビユの先生は言っている。つまり日本の医療体制の構造的な問題なのです。

本当にそれがその患者にとって最適の治療なのか。医者に頼っているだけでは一億同じファストフード治療のベルトコンベアに乗せられてしまう。それを回避すためにどうするか。インタビユの先生は重要な示唆を私たちに与えてくれています。それは、患者の方から望みの生活が送れるようにこういう治療を受けたいと積極的に提示すること。そうすれば、医師の側もそれを考慮した方針を考えてくれる。つまり、限られた診療時間のなかで有効に双方向のコミニュケーションが取れるように、患者側は普段から情報を得ておくことが大事な自衛手段であると感じました。お医者様に全てお任せ、仰る通り、は後々こんなはずではなかったと後悔の元となりかねない危険な姿勢といえるのです。

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