カレンダースリムに脱皮九月来る RECOCA
表題のスローガンは資産形成の手段を貯蓄から投資へと促すものです。ここでいう資産とは株式、投資信託のいわゆる金融資産を意味します。
岸田首相の目玉スローガンに「資産所得倍増計画」というのがあり、今年5月ヨーロッパ訪問の際演説でぶち上げました。ご存じでしたか。大昔池田勇人首相が「所得倍増計画」で一世を風靡しました。ゴロは似ていますが内容は似て非なるものなので、早合点して喜ばないほうが良いかもしれません。往年の所得倍増計画は、その恩恵をあまねく国民全体にいきわたせる目的のものでした。実際多くの国民、つまり今の高齢者はそのうまみを肌で感じられたことと思います。しかし、投資を意味する資産が付くと様子が違ってきます。現状では、投資によって恩恵を被るのはほんの一握りの裕福な層だけ。つまり、一番の問題は現在の日本に投資に対する諸々の環境整備が極めて不十分なことです。
まず、投資可能な生活余剰原資を抱える主たる層は高齢者だということです。高齢者はリスクを含む投資には耐えられません。なぜなら、投資に失敗したときの回復時間が年齢的に乏しいからです。一方、若者青年は初任給が低賃金の上、昔のような大きな年功上昇がないからいつまでたっても投資はおろか貯蓄の余裕すら不十分のままです。ですから、岸田さんのやることは順序が逆なんです。まず賃金を上昇させることが今やるべき第一の仕事。投資はそれから。環境が整えば自然についてくる。
ところで、高齢者が金持ちである最大の理由は賃金後払いの退職金制度です。だからこれを是正するのも手です。すなわち、退職金相当分を賃金に組み込むように賃金制度を改定する。ただしこれをやると、制度改定に名を借りて退職金だけゼロにして賃金は低いままという悪徳企業が大半だろうから安易に退職金に切り込むことには絶対反対です。
さらに投資環境不十分な点は、それはなんと投資を教授できる金融プロの不足だそうです。特に銀行にその傾向が著しい。(下記参考記事参照)そのため、実際に若者が銀行の投資信託で大損している例が目立つそうです。投資をする場合それ相応の研究が必要です。例えばサラリーマンが投資に比重を移すと、どうしても仕事中の時間も投資のことを考えるのに費やさざるを得ない。二足の草鞋にはどうしてもそういう弊害がつきものです。それを補うプロフェッショナルの人材が不可欠なのです。
さらに根本的な危惧があります。それは、資産形成をリスク商品主体にすることによって、失敗して後年路頭に迷う人たちが必ず一定の割合で発生することです。そのセーフティネットは今のままで十分だろうかという問題です。例えば現在直面したような急激な為替変動。これによって海外投資商品では大きな損得が簡単に発生します。大事な老後資金をそんな不安定な方法に任せられますか。そう思う人の方が私はノーマルな頭脳の持ち主に思えます。大事な我々の年金資金もいつの間にかリスク含みの投資財源にされているともいいます。岸田さん、少しおかしいのでは??
結論としていえることは、日本における一億投資家への環境は全くもって不十分。実はアベノミクスから20年この方全く進展していないというのが実情なのです。グーグルのようなITの萌芽もなく、ソニー、東芝、NECなどの凋落、ハウステンボスのようなエンタメも中国資本へ移行、産業界の惨状を呆然と見送るだけの政治と官僚群、あっという間のGDP20位転落。これらを、人口減少の不可抗力が原因と片付けてはいけません。だれの責任か。さらに、最も大事なのはその失敗から学び効果的対策をすぐに打つこと。米軍が真珠湾を見て、戦艦から航空機戦に戦術を転換したように。