肥料自給に貢献する「うんちとおしっこ」

ついこの前まで日本の肥料は下肥(しもごえ)といってトイレの産物そのものでした。私の田舎でも私の幼少期には農家の人が定期的にくみ取りに来ていました。もっと以前は売買の対象でもあったのですね。それが技術革新ですべて化学合成肥料に転化されました。おかげで独特の悪臭から解放され、トイレも近代化されました。汲み取りの時の匂いを経験している人はどのくらいるでしょう、興味があります。

余談ですが、RECOCAは匂いどころか、汲み取り作業の経験があります。あれは大学入学したばかりの頃。近所に住む女学生の友達にキャンプに行こうと誘われてほいほいついていった先がキャンプファイアのキャンプでなく、ワークキャンプという学生ボランティア活動でした。奈良の山奥でいろいろ作業するのですが、掘っ立て小屋を作って自活もする。そのトイレは当然穴ぼこ汲み取り方式。数日おきにくみ取るのですが、順番に当番が回ってきました。当時は当番は男子のみの役回りで誰も不思議に思わなかった。今だったら女性もいれないと差別で問題になったかもしれませんね。思い出すのは、意地悪な料理当番がいて、汲み取りの日にわざとカレーライスを出すのです。あの匂いと黄色の残像の中で何食わぬ顔を装って胃袋にねじ込むカレー、懐かしいです。あ、汲み取り作業をイエローワークと言ってました。

このようにある種毛嫌いされされる下肥が、世界的品不足と価格高騰にさらされる化学肥料の現状を改革する救世主になるという耳寄りな話がNHKWebニュースに出ていました。ただしさすがに昔のようにトイレの産物(うんちとおしっこ)そのものではありません。下水処理施設から出る廃棄物です。一般に産業廃棄物として廃棄されるのですが、これを原料として堆肥化するのだそうです。すでに2009年から九州の佐賀市下水処理場で事業化されている。製品はすべて地元農家に完売の実績です。

それがここにきて全国で注目を集め問い合わせなどが10倍になったとのこと。理由は百%輸入の日本の肥料の輸入価格高騰です。

輸入先は中国、ロシア、ベラルーシ。いずれも輸出量を制限しています。肥料の高騰、ハウス暖房燃料、輸送料の高騰のダブルパンチで、日本では野菜の高騰が起きていると報じられています。こんな時肥料の自給ができていれば農産物価格安定には効果絶大のはず。その観点から農水省でも汚泥肥料促進などを後押ししようとしているとのことです。しかし、国は自国発の産物、事業の促進にどうも鈍い気がするので今後どうなのか分かりません。どうか、コロナの薬のように拙速に海外産に飛びつかず、自国の技術にしっかり目を向けてもらいたいと思います。

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