この本、ぜひ読むべきだ。「私が原発を止めた理由」☜裁判官が書いた本

元裁判長が原発を止めた理由が良識的で感動。

「私が原発を止めた理由」樋口英明(元福井地裁裁判長)

著者は2014年福井地方裁判所において大飯原発運転差し止め判決出した時の裁判長である。

下記は原発稼働停止のあまりにも当たり前の理屈であり、これにどう反論して国は原発回帰に舵を切ったのかきちんと説明すべきだ。

「被告(電力会社)は原発の稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、極めて多数の人の生存に関わる権利と電気代の高い安いの問題を並べて論じるような議論は法的には許されないことだと当裁判所は考える。たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきでない。そうではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。

また被告(電力会社)は原発稼働が炭酸ガス排出削減に資するもので環境面で優れていると主張するが、原発でひとたび深刻な事故が起こった場合のすさまじい環境汚染を考慮すれば、環境問題を原発の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。」

いかがですか。驚くべき良識に沿った判断ではないでしょうか。こういう良識のある人にこそ国のリーダーになってほしい。

さらに、この本には2011年に起こった例の福島原発事故について、あの事故があの程度で済んだのは神の配剤とでもいうべき驚くべき奇跡が二つも三つも重なって起こったからだということが詳しく述べられています。当時の事故による避難区域は事故原発30kmでした。しかし、もしそれらの奇跡がなければそんなものではなく、大爆発によって半径250km圏内が避難区域になってしまうところだったのです。250㎞というと東京首都圏に及ぶまさに「東日本壊滅」の大惨事です。これが起こっていたら、令和もない「日本沈没」だったかもしれません。2011年3月15日の時点で、発電所吉田所長と菅首相は実際に「東日本壊滅」の事態を覚悟したそうです。ところがなぜか大爆発は起こらなかった。あとで調べてみると、本来頑丈であるべき建屋の欠陥で部品のねじが吹っ飛び亀裂ができたために圧力が抜けて大爆発に至らなかったのだそうです。さらに、事故直後の地上の風向きが西風であったことが幸いして、大量の放射能汚染物質は太平洋に吹き飛ばされ、南北の日本の居住区域を避けて飛翔してくれたのです。しかし、そのせいで米軍の「ともだち作戦」で福島沖に停泊していた米軍の艦船乗組員に被害が及んだとのことです。

上記の奇跡の詳細については、先週のBSTBSテレビの報道730で詳しく放映されていた。このように、原発大事故は確率が低くとも起こるときは確実に起こります。そしてその被害は日本沈没に匹敵することを福島原発事故から学ばなければなりません。まさに「失敗から学び教訓」とすべきなのです。日本人はどうもこれが苦手のようです。天が与えてくれた教訓をスルーすれば、今度こそ天罰が下るでしょう。神様はそれほど寛大ではないと思います。

付言すれば、原発は「滅びゆく恐竜」です。