深刻化する世界の水争い

こんにちは、東京多摩他地方の東久留米では冷たい雨。折角の花見の宴会が解禁だというのにこの4,5日雨模様です。昨日は高齢者施設のガーデンカフェでオカリナをやる予定でしたが雨で室内になってしまいました。初めての野外、それも桜の下で奏でられるとわくわくだったのに無情の雨でした。

雨に煙る東久留米の桜

しかしですよ、日本にこのように恙なく雨が降り、その結果恙なく飲料と灌漑の水が必要なだけ存在する事は、世界からみれば残念ながら今や稀なことなので、このことについてはいくら神や仏に感謝してもしすぎることはありません。

例えば中東:イラク中部ではこの4年間雨季でも降水ゼロ、ユーフラテス川支流の川底はひび割れ、1930年に統計を取り始めてから最悪の干ばつ。上流で河をせき止めダムを造ったことで住民の争いになり死者も出ている。

トルコ:飲料、灌漑、電力用の水不足が深刻化。そのため、ユーフラテス川上流にダムを建設。2000年に入ってから20ものダム建設。そのため下流イラクが猛反発。トルコとの経済封鎖を示唆。

ナイル川:上流のエチオピアがダムを建設したことで下流のエジプトとスーダンが猛反発、軍事介入の勢いを見せている。

フランス中部の町:火山性の豊富な地下水をフランス大手食品メーカーがめったやたらにくみ上げて大量のミネラルウオーターとして世界に出荷。2030年には2割の地下水が失われる見込み。住民と企業の間の軋轢が表面化している。

同様なことは米国の西部、中部の穀倉地帯でも起きている。この辺りには河川は全然ない。では灌漑の水はどこから来ているかというと地下の帯水層、つまり地下水をくみ上げているのである。例えば、カンザス州の大規模農場、酪農地帯。地下には世界一の帯水層(オガララ帯水層という)がありすべての灌漑水はこの地下水のくみ上げに頼っている。農業酪農について工場のような大規模化に成功し、1950年代にはかれら関係者は莫大な富を手にした。しかし近年の調査ではオガララ帯水層の汲み上げ消費量は帯水層への水の補給供給量をはるかに上回るようになり、持続可能ではなくなっていることが分かってきている。その行きつく先は、打ち捨てられる広大な農場の砂漠化である。穀物や牛肉の多くはここから日本にも輸出されている。なのでこのことは一地方のローカルな問題でなく、国際的な混乱が引き起こされるということである。しかもまずいことに、このような大規模経営者は帯水層が枯渇して食いつぶすまで全力投球を続け、決して開発を自分から辞めることはないのである。砂漠化した農場の跡地はあたかも鉱山の廃鉱のように打ち捨てられるあるう。そのことに気付いた従来からの小規模経営者は大規模農場の無制限な生産に異議を唱え始めている。それを大局的見地から国がサポートして持続可能な生産規模に改めるよう指導しない限り彼らは決して聞く耳を持たないであろう。

20世紀の戦争が石油を巡って争われたとすれば、今世紀は水を巡る争いになるだろう、と元世界銀行副総裁は述べています。日本は幸いなことに今のところ水争いとは無縁でいます。その理由は十分な降水量に恵まれていることと小規模経営の農業が主体であることでしょう。水の供給を上回るような消費を伴う大規模農業にならなかったのが幸いしています。ただ、食糧の自給率の低さが不安ですね。自分の水や食料は自給自足が絶対の原則ですから。