TVドキュメンタリー「デイ・ゼロ、地球から水がなくなる日」・その1

BS世界のドキュメンタリー「デイゼロ・地球から水がなくなる日」からエッセンスを取り出して、自分なりに理解したことを書いてみる。

生物の生存に不可欠な水、とりわけ人間の飲料、灌漑の命綱の水、つまり淡水だが、これは意外に乏しい。人が飲めるのは地球の水の2%、しかも入手可能な淡水の1/3は地下の帯水層に存在する。そして、帯水層の水量は地上に存在する水の百倍にもなる。地球生物を支えてきた帯水層の水が、人間の近代的な暮らしによって危機にさらされている、このままの生活では本当に地球から淡水がなくなるという厳しい警告のドキュメンタリーである。

まず具体的な異変の兆候は米国の都市、農場であらわれた。例えばフロリダのハイスプリングス。ここは湧き水の宝庫。それを支えているのは地下の巨大帯水層である。泉から帯水層へ潜ったダイバーの観察では、湧水の勢いが著しく衰え藻の繁茂が著しいことが分かった。要するに帯水層に衰退の異変が起きている。恐らく農業で使う化学肥料の影響とか灌漑の水の使い過ぎが原因であろう。

また海と砂漠にはさまれた巨大都市ロサンジェルス。ここでは伝統的に水不足と戦ってきた。そして、百年前に世界最大の浄水場が建設された。しかし近年の干ばつはさらなる水飢饉をもたらしている。とくに2012年から2年間の雨量は過去1000年間で最低を記録した。

その極めつけはカンザス州における巨大集約農場で起こっている。ここの穀物と酪農は米国の2割の生産を賄っている。輸出量も大きい。ここの地下には世界一の巨大な帯水層があり、飲料と灌漑用水の全てが供給されている。(オガララ帯水層という)帯水層までは結構な深さなのだが井戸掘りと灌漑技術の進歩で工場経営のような大規模農法が可能になった。その結果既に地下水層の水の1/3が消費され尽くしてしまった。なぜそんなことになるかというと酪農、つまり牛の飼育である。牛を飼うには巨大な水が要る。まず牛は人間の5倍の水を飲む。それに飼料のトウモロコシやアルファルファの栽培に大量の灌漑用水が必要である。トータルするとステーキ1枚には3700リットルの水が消費されている。牛一頭育てるとすると、毎日10分のシャワーを130年間浴びるに等しい水が使われるのである。つまり、人の飲み水でなく食糧生産に費やされる水量が問題なのである。しかも世界の食欲は増すばかり。1961年に比べ、食肉生産は世界で5倍に増えたという。

さて帯水層の異変は米国だけのローカルな問題だろうか。それを世界規模で調査するため、NASA(米国航空宇宙局)は人工衛星を使って空から観測した。衛星から計測する重力の経年変化が地下水量の経年変化を表すのだそうである。その結果は残念なものだった。飲料や灌漑に使用中の世界の帯水層は米国、アラビア半島、トルコ、シリア、イラク、イラン、インド、バングラデイッシュ、中国、オーストラリアなど広範に広がっている。これらでは予想をはるかに上回る速さで水量が減少していることが分かった。世界の半数の帯水層の現状では消費が供給を上回り、もはや水量が持続可能ではなくなっているのである。それもそのはずで、世界の帯水層が養える人口は20億と推計されているからである。とにかく人が増えすぎて、しかもその多くが食肉を食せるほど裕福になっている。このままいけば確かに「デイ・ゼロ」は遠くない。このことを知らされた私たちに何かできることはあるだろうか。

さて、更にこれに輪をかけた憂慮すべき難物がある。それは熱帯雨林の浪費。これが温暖化・水不足に拍車をかけていることが近年分かったのである。長くなったのでこれについては次回に回す。