気になるキーワードは「存立危機事態」。
何とも持って回った名称だが、日本が直接攻撃されなくても集団的自衛権(早い話が在日米軍を自衛隊が助力することができる)行使の出来る体制になるということである。これに対して中国がクレームをつけて「強烈な」抗議と中国本土から日本への渡航自粛措置を表明した。自衛権行使の判断自体は日本の内政だから他国にとやかく言われる筋合いはないはずなのに、中国がやたら神経質になるのは存立危機事態を台湾有事(武力攻撃)と絡めたからである。それにしてもなぜこれほど神経を尖らせるのか分からなかった。それが昨日ネットで評論家櫻井よし子氏の解説を偶然読んで納得した。中国がなぜこれほどピリピリするかは次の二つの理由から。①中国の台湾武力攻撃は直ぐに可能なように今や準備万端整った。(櫻井氏の言葉を借りれば、今やってる台湾近海での中国軍の演習は単なる演習ではなく戦闘モードへの「ドレスリハーサル」である。②米国シンクタンクによる、台湾侵攻時の中国軍と米軍との戦闘シミュレーション結果。米国シンクタンクは24ケースの条件を変えてシミュレーションを行った。その結果24のうち三つのケースで米軍敗戦となった。他のケースは全て米軍勝ち。そのうちの一つが日本(自衛隊)が米軍に給油等の協力しない場合だったのである。(つまり、日本が存立危機事態とせず、米国に非協力・中立を保つた時のみ中国勝利)中国は当然このシミュレーションを熟知しているから、台湾有事は中国の国内問題という理由で、その際日本に存立危機事態宣言をさせないように必死なのである。ちなみに米軍敗戦のもう一つのケースは米軍が台湾有事を見過ごして現場の出動に出遅れた場合であるという。
櫻井氏の分析どおりなら、中国はこの問題で容易には引っ込まないだろう。なぜなら中国の勝算は日本の中立性の有無一点にかかっているからである。日本がこのまま首相発言を取り消さず頑強な姿勢を崩さないとするなら、中国本土からの渡航自粛では収まらず日本の泣き所急所の一手を放ってくるであろう。それは中国からの食料輸出制限、ないしは全面停止。これは痛い。中国にとっての台湾併合はそれほどの国家的重大案件なのである。高市首相はそこまでの覚悟の上発言されたのだろうか。私は首相の発言の趣旨は正しいと思う。しかし、別の考えもある。つまり、仮に今明言しなくても内心では皆そう考えているのだから、今現在中国を刺激して不要な波風を立てる必要があるのかという意見も大いに成り立つ。どちらを選ぶかは首相の決断だが、次第によっては食料確保の危機に及ぶ可能性があるのだから、それに耐える覚悟が国民にあるのかを見極めてから発言されてもよかったのではないかと思う。高市首相の魅力は力強い国会のアドリブ答弁であるが今回のようなリスクと背中合わせであることも事実である。一番いけないのは、食糧危機による支持率低下で腰砕けになって発言を取り消すことである。