原風景

筆者の原風景は知多の海にある。白砂青松、全国百名勝に選定されたこともある。歴史的にも由緒がある。ただし、例えば東洋最古の海水浴場だとか、地名は弘法太子による命名だとか、人に言っても余り信用されない歴史だが。

 

この愛すべき景勝の浜辺も伊勢湾台風まで。直後にガラッと変わってしまった。高潮防潮堤、埋め立て工場誘致でかつての景勝は見る影もなく、電力会社の巨大LNGタンクや、風力発電の巨大風車に置き換えられた。

 

申し訳程度に作られた人工海浜ではサーフィン族が闊歩するというおまけも。

懐かしの小、中校も統廃合で校舎がない。「24の瞳」そっくりの校舎だった。

さて、現物のない原風景というのは年とともに美化される傾向にある。これはとても幸せなことである。

現物があると訪れる機会があるだろう。そのたびにこんなものだったのかと、夢が壊され現実に引き戻されるからである。

・夏去れば我が物顔のタンクかな

・サーフィンは外来種なり梅雨の空