日本語の音(2015年、昨日の記事の3日後投稿記事)

昨日紹介したRECOCAによる音の頻度分布の3日後に、ある外国人の書いた日本語の音をテーマにした著書を話題にした記事を投稿している。その著者の述べるところによると、日本語の音は柔らかいと一般に言われるが、必ずしもそうではない。たとえば、和英辞典の日本語の単語を調べるとk,s,pなど破裂音(摩擦音)で始まる語が20%もあると述べている。結局日本語の文章が美しいのは、摩擦音とそうでない音(これを何と呼ぶんでしたっけ?)のバランスが取れているときなんだと述べている。

実例として正岡子規の有名な俳句、柿食えば鐘がなるなり法隆寺を例示して次のような論考を示している。

「この句の前半には摩擦音の「k」が4個も出てきて、非常な緊張感を醸し出している。ところが後半では、一転柔らかい音と長音でその緊張が解け読者をほっとした気分にする。こういうバランスが重要。」

ちなみに日本語の摩擦音とは、無声音(p,t,k),有声音(b,d,g)である。

ところで、このバランスは音楽の和声においての常套手段でもある。フレーズの中では不協和音の緊張感をもたらし、フレーズの締めくくりに至って協和音(心地よい響きの和音)で緊張を解消させて終わる。こういう音楽しょっちゅう聞いていますよね。俳句も同じとは実に興味深かった。

下記の記事で当時作ったRECOCAの俳句「菜の花や朧月夜を口ずさむ」を挙げているが、上に記した音のバランス理論で改作してみる。下5に摩擦音kが出てくるが、これはバランス理論ではうまくないというから柔らかい響きの別の語に置き換える。さらに、俳句に動詞は避けよといわれるから、形容詞か名詞にする。⇒この二つを満たす語として「似合う夜」はどうだろうか。「菜の花や朧月夜の似合う夜」。ここで想定している「朧月夜」は月ではなく童謡の朧月夜です。菜の花と朧の「季重なり」の指摘を受けるかもしれないが、朧月夜は歌の題(固有名詞)なので季語ではありません。季語は菜の花のだけ。

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以下2015年の投稿記事採録

先に、俳句などの音の頻度分布を作成したが、こういうことに興味を持っている人はいるのですね~。やっぱり外人さんです。

最近出版の人気の本 

「驚くべき日本語」パルバース著

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・フランス語は美しいが×××語は汚い、と自国語を基準にして評することがあるが、それは間違い。どの言語の美しさもそれを習得することによって感得できる。

・言葉以外の政治、文化などのバックグラウンドの影響が大きい。たとえば、韓国人は日本語を聞いて、とても汚い言葉だといい、日本人はハングルを聞くに堪えない言葉だと評する等々。

・日本語はまろやか(平坦な)な音の言葉だというが、摩擦音のk、s、tで始まる単語が実に多い。例えば著者所有の和英辞典では実に2割がk。s、tも10%以上ある。

・摩擦音は緊張を強いる音、他はリラックス効果をもたらす。

・これらがバランスよくに文脈に配列されて、美しい響きになっている。

・子規の有名な句「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」は音の配列からも興味深い。

この句では、前半にk音が4個も出て、非常な緊張をもたらすが、以下「鳴るなり」の音と法隆寺の長音で見事に解消されている。

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子規が意図的にこういう効果を考えて作句したとしたら大した感性の持ち主と思うが果たしてどうだろうか。

・菜の花や朧月夜を口ずさむ RECOCA