9月4日出題の「似たもの日本語」の著者回答とRECOCAの注

〇今朝の読売新聞コラムに、「貧乏だと何事につけ真剣である。」という意味のことが書かれていた。実感としてこれは本当である。昔、定期的に給料が入っていたころは、自分の携行する財布の中身を気にしなかったし知らなかった。ところが今や百円玉が貴重な境遇になっているので、財布にいくら入っているか常にに知っておかないとなにかと困る、という一種の緊張感。怠惰な生活にならないためには必要なことではないだろうか。

〇一昨日出した問題

①ずれと食い違いはどう違うか

出典 似ている日本語 佐々木瑞枝著

まず、著者の回答

「ずれは比較となる考え方や時間などが少し違うことを言うが、比較するものの成否は問わない。それに対し、食い違いは上下の歯が合わないことに由来し、一致することが望ましいにもかかわらず物事が一致しないことをいう。

ずれは、二人の考え方や時間が一致しない場合に使う。

例 彼の証言は事実と食い違っている。

  感情の食い違いから離婚になった。

  二人の生活時間のずれでデイトができない。

  若者世代とシニア世代の意識のずれ。

RECOCAのコメント

ずれも食い違いも使い方に差はないと思う。小学館の和英辞典に用例が出ているので見てみます。

ずれる⇒正しい位置からそれること。例えば「壁の絵が少しずれている。」と書いてあります。つまり、ずれ、にも本来あるべき位置からそれるという意味があります。

一方同辞典で「食い違い」を引いてみると、「彼らの意見には食い違いがある。」という用例が出ています。著者の見解だとこの場合はずれといわねばならないと思いますが、この辞書によると食い違いでもよい。

以上から、RECOCAの回答は「両者に差は無い。」

②つり合いとバランス

著者の回答

「つり合いは物事に二つ以上の力が働いても二つの者が動かない状態をいう。バランスは安定したものや体の動きなどに使われることが多い。椅子のバランスが悪くて倒れやすいの場合つり合いは使えない。

つり合いの用例

①あの二人、性格は違うけれど、どこかでつり合いが取れているのだろうね。

②貿易収支の釣り合いを保つためにもっと輸出に力を入れたい。

バランスの用例

③平行台の上でバランスを崩した。

④トラックの荷物、バランスの悪い積み方だ。」

RECOCAのコメント

「つり合い」を和英辞典で引くとバランスと出ており、平均台の上をつり合いを取って歩いた、の日本語の用例も出ているので、まず③はつりあいと言い換えられる。また、①,②もつり合いの代わりにバランスと言い換えられる。ただ、④はつり合いとは言えない。思うに、「つり合い」は天秤棒、天秤計り、やじろべいの二つの者の比較からきていると思われるので、トラックや船の積み荷の平衡状態を表現できないのだと思う。積み荷のバランスが悪い⇒積み荷の釣り合いが悪い(?)椅子のバランスが悪い。⇒椅子の釣り合いが悪い(?)

つまり、バランスはつり合いを含むより広い意味を持った言葉である、と言えそうだ。