海洋の危機②大西洋の大循環の停止(2025~2095の間に起こる)

今日の人類の繁栄に限りない恩恵をもたらしてくれている海洋。現在の気候に決定的役割をはたしている海洋。その海洋が大気の二酸化炭素の増加による地球温暖化の影響で人類の生存に影響を及ぼす致命的な危機を迎えようとしています。一つは海洋の酸性化。これについては昨日の記事に記しました。もう一つの危機は大西洋の海流大循環の停止です。海水には何千年もかけて地球全体を巡る海洋大循環という大きな流れがあります。このうち、今回着目するのは大西洋を南北方向に流れる大海流です。この海流は特に「大西洋南北熱塩循環(AMOC)」と呼ばれています。AMOCは地球規模で熱帯の熱を北極へ運びます。なので、この海流に近い欧州の大西洋側は高緯度にも拘らず比較的温暖な気候に恵まれています。この海流が今世紀中に停止してしまうという研究結果が出されました。デンマークコペンハーゲン大学のコンピューターシミュレーションによる研究です。

この海流が南北に循環を起こす要因は南北の水温差と北極海域の塩分です。ところが地球規模の温暖化で海水温度の南北差が縮まり、北極氷山の融解で塩分濃度が薄まるとその流れが不安定になり、ある時点を超えると停止してしまうのです。AMOCは一種のベルトコンベアーと考えれば理解しやすいかもしれません。南北の温度差が動力になりベルトが南北に動きます。そして北極では海流のベルトを深部へ沈みこませる力が働きます。海水温度の南北差と北極の海水密度が高い(つまり重い)こと、この二つが海流ベルトコンベアーの動力です。北極の海水密度がなぜ高いかというと塩分濃度が濃いからです。なぜかというと氷山がたくさんあるから。氷山ができるとき塩分は氷に入りにくいので塩分は海水中に取り残されます。そのため北極海域の塩分は相対的に大きい。つまり海水の密度も大きいの(重い)ので沈み込むのです。

さて地球規模の温暖化で北極の氷山がどんどん溶けると、海水の塩分が氷山の淡水で薄まり海水の密度が減るので軽くなって沈み込む能力が減少します。その結果ベルトコンベアーは動かなくなるのです。

AMOCは世界の気候維持に極めて大きな影響を与えており、その停止は世界に大きな影響を及ぼします。まず直接的にはヨーロッパ。気候が劇的に寒冷化して乾燥化しサバンナとか沙漠のようになってしまうかもしれません。一説によると平均気温が5度以上下がると試算されています。農業の衰退、食料に甚大な被害が出るでしょう。アジア、日本にも大きな影響が出ます。モンスーン(季節風)が弱まってしまうことです。アジアのモンスーンは雨季乾季とか温帯における四季のめりはり雨の恵みをもたらしています。それがなくなれば重大な干ばつに悩まされることになるでしょう。つまり、温暖化が帳消しになり寒冷化、干ばつの襲来を警戒する必要に迫られるのです。

しばらく前までの研究結果では大西洋循環海流の停止が今世紀中に起こることはないだろうと言われていました。それが直近の研究では早ければ2025年にも停止ということになりました。あと2年後?!もう最近のいろんな破壊的結果の予測にはもはや真面目についていくのは困難になりましたね。人間いずれは死ぬんだからと、世の中どう変わろうと悠然と見送る精神的修行を早急に行って悟りの諦念に至るのが急務と思われます