人類の生存が危ぶまれる海洋の危機①

◎昨夜の満月

夜も暑かったですね~。お月さんを眺めていたら涼しくなるかと思ったのですが全然でした。「エアコンを適切に使おう」と盛んに言われていますが、ホントにそうですね。私は老人ですが、年寄りは暑さのセンサーが鈍いというのは本当の様ですよ。私はなんか最近36度の気温に順応した感じがします。これが危ないんですね。

◎海洋の危機

さて、この表はきのうの各都市最高気温を記したものです。

那覇を見てください。南に位置するのに日本で最も気温が低いです。32度なんて何とも羨ましい!沖縄へ避暑に行こう、なんてことになりますね。これは海の恒温効果です。水は非常に温まりにくい物質なので海に囲まれた島は酷暑になりにくいのですね。ところが、近年の温暖化と大気の急激な二酸化炭素の増加で人類に数々の恩恵をもたらす海洋に異変が生じています。場合によっては今世紀中に、何をしてももう後戻りできない人類にとって危機的状況が到来するかもしれません。海洋というのはそれほどの宝であることを改めて思い知らされました。その危機とは①海水の酸性化、②大西洋の海流大循環の停止です。今回は①についての話です。

①海洋の酸性化

引用元:NHKBs「コスミックフロント、2023.7放映」

数週間前、拙記事において温暖化の主原因である大気中の二酸化炭素は海洋が吸収してくれるから緩やかな放出なら問題ないという趣旨を書きましたが、もうそんな悠長なことは言っておられない気がしました。

すでに二酸化炭素の急激な吸収で、海洋の酸性化が急速に進んでいるのです。海水はもともとややアルカリ性であるのが正常です。PHでいうと8くらいです。それが北極海で7.5と酸性に傾いています。二酸化炭素は冷水に、より溶けやすいので、異常は極寒の極地の海から進行します。酸性化の傾向は極地からいずれ世界の海に進行するでしょう。酸性に傾くと何故いけないかというと、魚介類の生存が不能になることと地球温暖化の歯止めが効かなくなるからです。

さて、水に炭酸ガスが溶けると水が酸性になるメカニズムは次の通りです。

二酸化炭素が水に溶けると炭酸になりますが、炭酸はすぐに水素イオンと炭酸イオンに分解します。この水素イオンが多いと酸性、少ないとアルカリ性、真ん中を中性といいPHという尺度で表します。中性がPH=7。7から上がアルカリ性、下が酸性です。大量の二酸化炭素が溶けると、水素イオンも大量に増えて酸性に傾くのです。

・酸性に傾くと魚介類が減る

これは困りますよね。日本人が魚が食べられなくなったらどうなるでしょう。貝もいなくなります。なぜ魚がいなくなるかというと、酸性化すると魚や動物プランクトンの孵化率(卵がかえる率)が急激に悪くなるからです。特に動物プランクトンへの影響は深刻です。孵化しにくくなるのに加えてプランクトンの殻が酸性化で溶けて死んでしまうのです。プランクトンがいなくなったらどうなりますか。魚の餌がなくなってそもそも魚は生存できなくなります。

・酸性化すると地球温暖化がさらに加速

今回このTVを見て感銘を受けたのはこの部分でした。これは全く知らなかった。こういう概念は学校で教わった記憶がない。正に馬齢を重ねていたのでしょう。「生物ポンプ」という概念です。

生物ポンプとは簡単に言うと次のような概念です。

大気の二酸化炭素が増え海水へ多量に溶け込む⇒すると海水中に植物プランクトンが繁茂する⇒植物プランクトン光合成で炭素を取り込み体に蓄積(その結果大気中の二酸化炭素が減少する)⇒大量の動物プランクトンが集まり植物プランクトンを食べる。(炭素は動物プランクトンへ移動した)⇒動物プランクトンの糞と死骸に炭素が移動⇒糞と死骸は海底に堆積(大気の二酸化炭素は海底に移動蓄積)この一連の流れを生物ポンプと言います。海底は低温、日光がない環境なので有機物の分解がなく、海底に沈んだ炭素は半永久的に閉じ込められるのです。

海洋の酸性化で動物プランクトン(特にオキアミ)がいなくなったらどうなりますか。植物プランクトンが繁茂しても、それを食べる動物プランクトンがいないので生物ポンプが機能しないのです。その結果大気の二酸化炭素の吸収が減って温暖化はさらに大変な事態になります。

生物ポンプについてTV映像で説明がありましたので参考のために画像を載せておきます。

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   (赤丸が光合成で取り込んだ二酸化炭素

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   オキアミが食べる(炭素はオキアミへ移動)

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  オキアミの糞へ炭素が移動

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  糞と死骸は炭素を閉じ込めて海底へ