懐かしい唱歌童謡、などととこれまで気軽に言うことがありましたが、唱歌と童謡はどう違うのか、同じなのかと時々思うことがありましたが曖昧なままできたので、暇つぶしに調べてみました。
まず、唱歌という言葉ですが、これは非常に古い万葉期からの歴史的古語であることが分かりまず驚きました。(しょうが)とも発音するようです。意味は、声を合わせて歌うこと、笛など楽器に合わせて歌うなど現代の意味と変わりません。独唱でなく斉唱ということでしょう。
そして、私たちが一般に童謡・唱歌という場合の唱歌は、いわゆる文部省唱歌を指します。これは、1872年学制発布時の音楽取り調べ掛かりにより編纂がはじめられたもので、終戦直後「音楽」に改名されるまで続きました。基本的に学校教育用の歌なので、歌詞は教訓的であり、花鳥風月を大人の言葉で歌ったものが多いと記してあります。メロディは長調でファとシの音を使わないものが多いそうです。(いわゆるヨナ抜き音階)拍子は2または4拍子。もう一つの特徴は作詞作曲者を明示しないことです。例外的に明示されてる場合は、後日調査で判明したものです。ですから一言で言えば「官製」の歌が文部省唱歌です。
これに対して童謡ですが、これは伝統的教育的な官製の学校唱歌に反発する当時の作詞家、作曲家による「民製」の歌を指します。大正期に童謡運動としてその動きが始まりました。新鮮な子供感覚の詞と親しみやすい旋律によって時代の流れを表した歌が受け入れられていきました。作者も超一流の人たちです。鈴木三重吉、北原白秋、西条八十、三木露風、野口雨情、山田耕筰、中山晋平・・。
さて、これらの唱歌・童謡ですが、近年の流れとしてどんどん忘れ去られていくようです。なぜかというと、学校でほんのわずかしか教えられないからです。音楽教科書からも削減され、一応参考教材には載っていますが、肝心の教える先生がもはや未知の歌になっているので教えられないのだそうです。それと、文部省唱歌がごっそり削られた経緯は敗戦に伴うGHQによる検閲です。これにより、戦争英雄を称える歌、戦意高揚の歌が無条件に削除され、すこしでもそれを匂わす歌詞の歌も教育現場から退場させられています。その結果現在残っているのはほんの一握りの検閲を通った歌です。この検閲に輪をかけて官側の過剰とも見える忖度が響いています。さらに、近年のゆとり教育のしわ寄せが受験に無関係の音楽にきて、物理的に音楽の時間がすくなくなり、童謡唱歌に手が回らないという状況だそうです。だからけしからん、とは言いませんが、子供の情操教育という面でいささかどうかなという懸念はないのでしょうか。数学者の岡潔氏はエッセイの中で、数学の基本は情緒だと看破しておられます。幼少時の豊かな情緒育成がないといかなる学問も大成しないという意味です。
参考図書
検閲・忖度で消されそうになった歌の例。
一番馬鹿々々しいと思った例はこれ。
♬うみは広いな~の「うみ」です。
この歌が軍国主義だそうです。⇒バーカ(馬鹿)
3番にこんな歌詞があるからです。
「うみにおふねをうかばせて
いってみたいなよそのくに」
これが軍艦による大陸侵略を連想させるだと。アホか。