日本ではマスクの着用が異常とも思えるほど多いですよね。これはコロナの全盛期でもそうだったし、5類に格下げになった後の現在も同じです。特に医療機関訪問はすべてマスク着用がマストの条件です。これは、日本人が異常に用心深い性格のためなのか、あるいは他になにか理由があるのか、少なくとも私にとっては謎でした。
しかし、先日5月26日(日)の朝日新聞で謎が解けた気がしました。日本人のマスク好きは、単に性格の問題だけじゃなくて、それらしい理由がありました。それがこのリンク記事です。
それは、日本のスーパーコンピューター富岳(スパコン富岳)を駆使して行ったマスク越しの飛沫飛散に関するシミュレーションです。ちなみに富岳は性能世界一認定のスパコン。マスクによる飛沫飛散防止がどのように可能かが、複雑にして膨大なスパコンのシミュレーション計算で明らかにされたのです。2021年に行われたこの研究は、スパコン界のノーベル賞である「ゴードン・ベル賞」を受賞しました。この研究結果を一言でいえば、マスクは飛沫飛散防止にかなりのというか思った以上の効果があるということです。こういう背景があるので、日本ではマスクへの思い入れが人一倍強いものになっているのではないでしょうか。
ただし、これに対して素人RECOCAがコメントを付け加えれば、飛沫の多さと感染(発病)し易さは直接比例しないのではということです。そうでなければ、マスクほぼ百%の日本でなぜあれほど世界一二の感染者数になっていたのか説明がつきません。だから私のマスク評価は極めて限定的です。
さて、ここからはおまけの話題です。それはAI(人工知能)の能力が、さらに思ったより早く次元を上げたのではないかということです。これも上と同じ新聞記事からの情報です。
理化学研究所のある研究者はチャットGPTの実力を試すつもりで次のようにチャットGPTに質問をしたそうです。「スパコン富岳を利用してコロナパンデミックを抑えたい。どんな研究が効果的か」すると、AIはノーヒントでゴードン・ベル賞の研究内容を提案してきたそうです。もちろんAIにはゴードンベル賞のことも伏せてありました。それだけでなく具体的な研究方法、例えばエアロゾル拡散の方程式を解くとか部屋の換気口とか人の配置を考えるとかを次々例示したそうです。そして、スパコンプログラムをすらすら書き始めたそうです。この時ゴードンベル賞の結果は公開されていないので、このAIは独自に考えて研究テーマをひねり出したものと解釈されます。これは非常に驚くべきことで、これまでのAIの常識を覆すものです。つまり、AIの能力はテーマを与えなければ引き出せない、テーマの発見や仮説の構築はあくまでも人間の創造力の分野と思われていました。ところが今やAIはその分野にも侵入してきたのです。この傾向は今後急激に加速するといわれています。今後、研究者はテーマの発見段階からAIに頼ることが不可避にならざるを得ないそうです。つまり、人間の専売特許(科学の創造性)がまた一つ奪われることになるのです。そうすると毎日ノーベル賞級の研究がAIによって世界中に充満する時代が来るかもしれません。ではその時研究者に残された仕事は何でしょうか。AIの出してくる膨大な玉石混交の結果から宝石の卵を掬い上げることだけになるかもしれません。これは「博士」の仕事に相応しいのか議論のあるところでしょう。ですが、AIの出す研究結果の著者は人間です。ですから研究の結果責任はあくまで人間である研究者が負わなくてはなりません。その意味でAIがどんなに優秀で高次に進化しても、それは人間の道具に過ぎないという一事を常に抑えておく必要があると言えます。