ここで言いたい「形骸化」とは国際組織のことです。
まず第一に国連常任理事会です。これは今回のロシアの拒否権行使で広く知れ渡りましたね。こんな国際平和構築に無用の長物となり果てた国連にいまだに多額の拠出金を出し続ける国々。いったい何のためでしょうか。下々にはさっぱり分かりません。
そして今回また無用の長物になりかけた国際組織があります。それは国際刑事裁判所(ICC)です。
ICCは戦争犯罪や人道に反する罪、集団殺害、侵略の罪など国際社会で重大な犯罪を犯した個人を訴追・処罰するための常設の国際裁判所です。設立されたのは2002年ですからまだ新しい組織と言えるでしょう。国際法に基づいて裁く重要な役割を担っています。加盟国は124か国。
ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻が国際法に抵触するとICCに認定され逮捕状が出されました。逮捕状が出された被告について加盟国は逮捕する義務があります。当事国のロシアは自国の大統領を逮捕するはずがありませんから、ICC加盟国へ渡航した折などにはICC加盟国は逮捕しなければなりません。ところが最近プーチン氏は加盟国モンゴルへ外遊しました。当然モンゴルは逮捕の義務がありますが実行しませんでした。モンゴルが招待したのだから逮捕するはずありませんね。こうしてモンゴルは国際法の秩序と自国の生存利益とを天秤にかけて後者を選んだのでした。そして、ICCの形骸化に加担するという大きな汚点を残した結果となりました。これに対するモンゴルへのICCによる処罰は何もないようです。
私の個人的なICCへの印象は、こんなものははじめから形だけの無用の長物だろうと思っていたのですが、調べてみるとそうでもないようです。例えば過去3件国家主権者に有罪判決が出ており、いずれもその刑が実行に移されているのです。
・トーマス・ルバンガ(コンゴ民主共和国の武装勢力指導者。子供兵の徴募と使用の罪で14年の刑⇒現在も服役中。
・アフマド・アル・アフディ(アフリカマリ国):文化遺産破壊の罪で9年の刑⇒現在服役中。
つまり、ICCはアフリカみたいな小物には影響力を行使できるが、プーチンみたいな超大物はモンゴルみたいな小国では手が出せないという簡単な理屈でした。
かといってプーチンが現在血迷って米国へ外遊したと仮定したとき米国手を出せるでしょうか。あとくされが怖くて何もできないでしょうね。かくしてICCの機能は浸食され形骸化が進行する。