♬昼の夢by奥田良三(往年の名テノール歌手)

お早うございます。

今回はちょっと変わった趣向で、私の手持ちのCDからいくつかアップしました。これは手持ちCDを整理していて見つけたものです。30年前に購入した3枚組のポリドール社版、「奥田良三 思いでの名唱集」です。

奥田良三氏は1903~1993年のクラシックのテノール歌手でイタリアでベルカント唱法を身につけた歌手です。この歌手の名前も存在も30年前全く知りませんでしたが、たまたまNHKの音楽番組音楽の泉(村田武夫解説)でこの人の歌う昼の夢を聞いて魅了されこのCDを購入しました。

この曲「昼の夢」は初めてお聞きになる方がほとんどだと思いますが、日本にもこんなに流麗で艶やかな曲があったのかと驚かれるのではないでしょうか。1911年城ヶ島の雨の歌曲で有名な当時まだ新進の作曲家テノール歌手梁田貞の作曲です。以来、何人かの歌手の昼の夢を聞きましたが、断然奥田良三の右に出る歌唱はありませんでした。高音の艶やかさが段違いです。一方流麗なメロデイとは裏腹に、付けられた歌詞は飛び切り古風です。作詞は当時の劇作家で詩人の高安月郊。古風な詩ゆえか、発表当時かなりはやっともののその後取り上げられることはほとんどなくなりました。惜しいことです。編曲はフルートの序奏が入って限りなく美しい。

       昼の夢

薔薇(そうび)はなさく かげに伏して
詩(うた)をまくらに 仰ぎみれば
うたのこころは 花に入りて
笑(え)むよ花びら 笑むよ笑むよ
笑みて笑みて うたとなるよ

薔薇はほほえむ かげに伏して
詩をいだきて 眠りみれば
はなのすがたは 夢に入りて
舞うよ乙女の 舞うよ舞うよ
舞いて舞いて 恋となるよ

乙女まいまう そでに触れて
恋をうたいつ 我も舞えば
ゆめのこころは 姿ぬけて
散るよもろとも ちるよちるよ
ちりてちりて はなとなるよ

ではご視聴ください。

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ところでこの時期の奥田良三は声から推察して多分壮年期を過ぎたころではないかと思います。デビユー時期の飛び切り柔らかなビロードのごとき艶やかな声と聞き比べるとはっきりわかります。残念なことに声は年とともに急速に衰え歌唱技術でカバーするには限界があります。RECOCAは歌手については、クラシックであろうと流行歌手であろうと全盛期の歌手の声しか聴きません。とくに懐メロ歌手の歌唱は気の毒で聞いておられないのです。しかし、奥田良三氏に限っては例外中の例外、声のちょっと衰えた壮年期の方がはるかに効きごたえがあるのです。理由は後年磨き上げられた透明でクリアなピアニッシモ(再弱音)の魅力です。詩人のサトーハチローは「透き通る青空のような」と形容したそうです。

それでは丁度今回のCDに聞き比べるのに丁度いい材料が入っていましたのでご紹介しましょう。題材は同じく梁田貞作曲の城ヶ島の雨です。

①壮年期の歌唱(声は全盛期を過ぎていると思われる)

それを補って余りある美しいピアニッシモと迫力あるフォルテ、それにダイナミックな歌唱。

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②若き日の歌唱(声は全盛期と思われる)美しすぎるほど柔らかく美しい。

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