心理学その3(認知心理学)60分でわかる心理学から(ニュートン増刊8)

①記憶のメカニズム

記憶には脳の海馬という部分と大脳皮質が関わります。目や耳など感覚器官から得た情報は「感覚記憶」として一瞬だけ脳にとどまります。そこから覚えておこうとした情報を選択して海馬に送り、「短期記憶」として保存します。保存期間はせいぜい数十秒だけです。もっときちんと覚えておくためには、復唱とか見直して長期記憶として大脳皮質に留め置かなければなりません。長期記憶になるとそう簡単には忘れなくなるのです。さて以下の記述は雑誌と無関係のRECOCAの解釈です。

直前のことを覚えることが苦手な人は海馬の能力が弱いのです。実は私がそれ。子供のころから意識していました。誰かからものを借りたとき、それをどこに置いたか定かでなくなりとても気になったのです。今でも家の鍵とか火の始末には人一倍神経質です。海馬の能力は一般に年とともに老化します。鶏みたいに3歩歩いたら3歩前のことは忘れるというのはこのせいです。認知症も海馬の劣化から始まって、直近のこと新しいことが覚えられなくなります。記憶の入り口が壊れるのだから短期も長期の記憶もできません。しかし昔覚えて長期記憶に定着していること忘れていませんし、思い出すこともできます。後期高齢者運転免許更新の時の認知機能検査は短期記憶能力つまり認知症に関係する海馬の劣化状態を検査しているのです。

②脳の情報処理・ボトムアップ型とトップダウン

次の絵を見てください。隠れている生物を見つけられますか。

中央に後ろ向きの猫が隠れています。これをみつけるのにどうされましたか。ほとんどの人は一目見ただけでは見つけられなかったと思います。そこで、画像の中で目にする情報を細部から積み上げながらその形が何か理解しようとされたと思います。そのプロセスが脳のボトムアップ型の情報処理です。ところがいったん猫という正解が分かってしまうと、再度この絵を見たときいかがでしょうか、今度は一目で猫が分かったのではありませんか。このように気づいてしまった後は、すでに知っている情報をもとにした「トップダウン」型の情報処理が行われてすぐに猫が見つけられるようになっているです。

上記のことについて、以下はRECOCAの解釈です。

人間とAI(人工知能)の認知方法の特徴がまさにこれではないでしょうか。AIは一秒間に膨大な数の処理を行います。つまりこれはボトムアップ処理を一生懸命やってるわけです。人間がこれと競争してかなうわけがありません。ボトムアップ処理を中心とする仕事はAIに任せて、今後人間の出る幕はないでしょう。

人間の特徴はトップダウンの認知機能です。これからの人間はこの機能を鋭敏にすること。AIとの共存、住み分けはこれしかありません。例えば囲碁将棋の棋士。盤面をみて一瞬で最善手が分かるなどはこれでしょうね。まずいろんな仕事の場面でボトムアップ処理の経験を積むこと。そしていずれの日にかその道でトップダウン型の認知・判断ができるようになること。これがAI時代の人間生き残り必須条件だと思います。