人類何十万年規模の「中性化の」運命

昨年2022年の人口動態調査が国から公表された。それによると出生率が史上最低となったとのこと。松野官房長官はこのことを「静かなる有事」とのべて事態の深刻さと捉えているが、実はこの傾向はのちに示すように30万年規模の人類史の傾向が絡んでおり止めようがないのである。その原因は人類史上脈々と進行する人間の「中性化」。中性化により必然的に生殖が疎かになる。太古の人類社会は狩猟生活から始まった。そののち農耕を始め定住集団生活に移行した。狩猟をやめ農耕定住時代に移行した男性の男性ホルモン(テストステロン)は減少していき、それに伴って精子の数が減少、その質も劣化(奇形の増加)を続けているのである。その傾向は現在も進行している。すなわち男らしさの減退=中性化である。男性ホルモンが減ると精子の数が減り質も劣化する。それが生殖に害を及ぼして少子化を来している。現代男性の精子の減少劣化は直接観察されている。

以下NHKBsサイエンスゼロ「人類の危機・中性化と生殖の未来」から抜粋

現代男性の精子の数が著しく減少した例が多く見られるようになった。奇形の割合も増加。下の画像で左は正常な男性精子。右は少ない精子

男性における男性ホルモン(テストステロン)の減少がその原因である。

上のグラフに見るように2000年以降その傾向が激しい。この40年間で50%以上の減少である。ところである個人においてその人の中性化が進行しているか否かを簡単に見分ける方法がある。薬指と人差し指を比べて、薬指が長ければ男性ホルモン過多。逆ならば女性ホルモン過多である。この傾向と男女差が合致していなければ中性化が進行した個人といえる。これは占いでなく科学的な話である。さらにこんな研究もある。じつは男性ホルモンテストステロンの減少は生活習慣とも密接な関係があることが分かった。例えば肥満であればあるほどテストステロンの分泌がすくない。男性の太りすぎは中性化のもとと言える。子育てもテストステロンの減少になる。男性の子育て参画はテストステロン減少=中性化になる。そして女性の場合、社会で仕切る立場になると(会社で上司になるなど)テストステロンは大幅増加することが分かった。したがって近年の人の中性化は社会生活の反映そのものだと言える。

さて、人類史の研究からは、中性化と生殖機能の劣化は今後とも歯止めが効かぬ人類の享受すべき運命であるとされている。すなわち、近い将来にはさらに人類の生殖が不能になり、その結果人類は滅亡の道を進まざるを得ない運命にあることになる。

しかし、ご安心ください。そのような滅亡の運命を克服する研究が着々と行われている。それは有性生殖によらない無性生殖技術の開発である。そのキーになるのが日本が開発したIPS細胞。IPS細胞は原理的に人体のどの部位の細胞にも作り変えられる。この原理を使って、例えば人の足から採ったIPS細胞を精子卵子にするのである。それを人工子宮で育てる。この技術は既にネズミと羊で成功している。しかし人への応用は倫理的問題で現在研究が禁止されている。しかしどうしても有性生殖で埒が開かなくなれば採用せざるを得なくなるだろう。そうなると今では考えられない生殖の形が可能になる。例えば高齢者の子供、男同士、女同士、更には一人の人間からも子供が作れるようになる。つまり男女の結婚という形態と生殖は全くの無関係となり、そもそもおひとり様であろうと養育能力次第で子供を持てる時代になるのである。この時代の到来は遅いか速いかだけで必然であることがある意味恐ろしいことだ。現政権の異次元の少子化対策というのはそこまで見通した政策であろうか。そんなわけないよね。