久しぶりの「朝ドラ」NHK

久しぶりというか、自分は全く朝ドラを見たことがない。理由は特にないが連続物は面倒なのである。しかし、今回の「虎に翼」はちょっと興味がある。題名が奇抜だからということではなく別の理由で。

このドラマの主人公は、日本初の女性で司法試験合格者で弁護士になった三淵嘉子氏。弁護士には終戦間近に就任、戦後は裁判官、裁判長、裁判所長を歴任する。同氏は朝ドラでは虎子という名の新進女性弁護士として登場、今週は戦後発布直後の憲法に相応しい民法への改定作業グループの一員として活躍している。そしてこの後家庭裁判所の立ち上げに尽力して、家庭裁判所の母と呼ばれることになる。その意味で、一人の法律家として法曹界のレジェンドと目されるに相応しい存在なのである。

さて、戦後三淵氏は家庭裁判所とは別の大きな仕事(裁判)に係ることになる。それは、いわゆる「原爆裁判」である。この審理、判決に同氏の法律への信念の集大成として心血が注がれることになる。

原爆裁判とは⇒被爆者5人が原告となり日本国を以下の通り提訴した。「米国の原爆投下は国際法に違反する不法行為である。日本政府は米国に代わって原爆被害者に補償賠償すべきであるとして、精神的損害に対する慰謝料を要求」

この裁判は民事訴訟ながら、戦勝国米国の原爆投下についての国際法上の是非を問いかけており、その判決によっては国際関係に影響しかねない重大裁判として注目された。

裁判は1963年に結審、判決は米国の国際法違反、つまり戦争犯罪であるという戦勝国米国を法に基づいて糾弾するという堂々たる内容だったのである。そしてこの判決は世界に広く報道されかつ高く評価された。翻ってこのことを知る日本人はそんなにいないのでは?。自分も全く無知だった。理由は当時のマスコミが国や米国両者の関係に忖度して詳しくは報道しなかったのだと思う。この判決作成の中心人物が虎子つまり三淵裁判官だったのである。私はこのことを知って、同氏の業績として原爆裁判判決文を除外することはできないと思った。なので、このことがNHKの朝ドラ虎に翼の中で言及されるかどうかに非常な興味を持って注視しているのである。NHKの報道姿勢を推し量る格好の材料でもあると思う。

この原爆裁判における原爆投下の違法性糾弾は、現在でいえば国際司法裁判所の管轄であろう。それを敗戦国日本の裁判所が、1963年GHQの影にも臆することなく法に向かって真摯に突進した快挙。その中心人物が「虎子」なのである。すなわち家庭裁判所と原爆裁判は虎子さんの業績としては車の両輪であると強く確信している。