「日本の食が危ない」文芸春秋4月号から

日本の食の危機についてはこの頃いろんな雑誌、書籍で警鐘を鳴らされています。でも多くの人にはそれほど具体的に切迫した警告としては響いていないようですね。自民党や岸田政権が分からぬように誘導しているからです。米国の意図も影で大きいですね。でもよく考えればこの危機は本当に起こりうることなんです。まず何が危ないかというと食糧の自給率です。日本は先進国中最低の自給率です。カロリーベースで38%。コメは98%、鶏卵は98%ですが、大豆は7%、小麦は17%、牛肉38%と低い率になっています。牛肉は見かけ以上に脆弱です。しかもこれはいわゆる「下駄をはいた自給率」と言われています。というのは肥料や畜産飼料穀物の大部分を海外輸入に頼っているからです。もしこれらが有事でストップしたらたちまち飢餓に陥ってしまうでしょう。

雑誌の記事では物流が停滞する要因として次の4つを上げています。

①コロナ禍、②中国による食料の「爆買い」、③異常気象による世界的不作、④ウクライナ戦争

あまり私は知らなかったのですが、②はバカにならないですよ。要するに日本は食料の買い付けで他国、特に中国の後塵を拝してしまっているのです。買い付け競争に勝てないのです。例えば中国の急激な生活水準の上昇で輸入量が劇的に増えているのです。例えばトウモロコシは2016年から10倍に増えています。その総量はなんと年間1億トン。比べて日本はわずか300万トンです。「もし中国がもっと買うと言い出したら輸出国は強い購買力を持つ中国に一気に流れ、日本に売ってくれなくなるかもしれない。日本の「買い負け」はそれほど深刻な状況にある。」それだけではありません。牧草もしかり。アメリカ産牛肉も中国が高値で買うので、日本の輸入価格も吊り上がっています。水産物も買い負けが始まっているそうです。その他化学肥料、コンテナ船でも中国の爆買いで危機的状況に追いやられているそうです。知らなかった。

でも栄枯盛衰は激しいです。いま中国経済の先行きに赤信号がともっているようです。失業率は20~30%。不動産バブルの破裂です。日本は2000年初頭にバルブ崩壊で不況デフレになり今に至っていますが、これから起こるであろう中国経済の崩壊は日本の比ではないとされています。もし起これば中国べったりの日本市場はそれなりの負の影響を受けるでしょうが、少なくとも爆買いの程度は縮小するでしょう。

それはともかく日本は食糧安保を根本的に考えなくてはなりません。それこそ長期戦略の柱中の柱です。軍事よりもっと根幹の問題です。例えば日本農業。後継者が少なくどんどん農業放棄土地放棄が起こっています。そこへ、今だけ金だけ自分だけの工場スタイルの企業が入り込んできます。そして大規模経営で徹底的に土地を使えなくなるまで利用しつくす。米国カリフォルニアの大規模牧場の二の舞に陥るでしょう。

さらに、農業への財政支出は先細りの一方です。最近は年間2兆円。一方の防衛予算は今後五年間で年間43兆円にと素覚まし熱気ですが。しかしこれで有事の際本当に日本は大丈夫でしょうか。戦力増強で勇ましく戦っている陰で食糧不足の国民がバタバタ飢餓で死んでいくことにはならないでしょうか。