さざなみ

ある政府関係者は、日本の新型コロナ患者数の状況を欧米・インド等の‘大波状態’と比較して‘さざなみ’と表現した。そのうえで、こんなさざなみの状態でオリンピックを中止したら世界から笑われる、とSNSで述べたそうだ。

なるほど。患者数がさざなみであることには完全に同意する。何しろ一年半の累計数がわずか総人口の0.5%だから。

しかし、オリンピック云々を笑われる以前に笑われるのは、そんなさざなみでも難破する医療体制であり、緊急事態宣言であることに気が付かないのだろうか。

オリンピックの開催に固執する政府は、期間中多数の医療従事者の供出を要請している。これはずうずうしいというか、無いものねだり。あたかも殿様が城の工事に無理やり庶民を徴用して困らせる定番時代劇とダブル。

入国したオリンピック関係者の幾人かは必ず新型コロナを発症する。今の大阪みたいに入院先がひっ迫しているときにそんな事態に直面したら、一般国民の患者と有名人選手と比較して入院の優先順位をどうつけるつもりだろうか。先日枝野さんはそう質問したそうである。首相は例によって最善を尽くすとしか。中学生並みの語彙でも国会は務まることを教えてくれた。

それはともかく、もしオリンピック関係者の入院先が足元の首都圏になければ必ず空いている候補先を近傍から探すだろう。同じことがなぜ今できないのか不思議でならない。大阪はすでに入院患者が地元で賄いきれないくらい溢れて自宅待機中と報道されているが、なぜ市内(府内)にこだわるのか。隣接県に助力を求めないのだろうか。助力要請しても応えてくれないのか。この一年間、医療ひっ迫により緊急事態宣言と聞くたびに首をひねってきた疑問である。誰か教えて。他県の患者の受け入れは拒むのか。江戸の幕藩体制でもあるまいに。

ある在日中国人の言葉。日本人と中国人の違いを表して。「日本人はそれが嘘とわかるまでは信じようとされます。一方中国人は、それが本当とわかるまでは信じません。」

今の時代の諸問題、どちらの方式で対処されますか。日本人方式は素直で好ましいのだが危険に思えて仕方がない。嘘とわかった時点では取り返しが効かない公算が大だからである。