史上最強食材大豆の底力  家森幸雄 神奈川女子大 @文芸春秋9月特別号から抜粋

大豆の主成分イソフラボンがその長寿維持の主役です。これは世界25か国61地域の長寿及び短命地域の調査から得られた結論。

特にそれは、中国の長寿で有名な中国貴州省の首都貴陽の調査から得られた。ここではブイ族などの少数民族が人口の三分の一を占め、中国では非常に遅れた地域と言われています。なのになぜか長寿者が多いのです。

理由は主食が大豆とトウモロコシであることでした。現地の市場では多くの野菜とともに色とりどりの大豆が並んでいました。干し豆腐、納豆も売っている。健診の結果食塩摂取量9.2gと少なく血圧も112。この結果から長寿の秘密は大豆のイソフラボンであると推測されました。

イソフラボンは構造上女性ホルモンであるエストロゲンと酷似しています。そしてエストロゲン動脈硬化予防に貢献する成分なのです。そのため、心筋梗塞は非常に性差の大きい病で、どの国でも女性の心筋梗塞発症は男性の3,4割と少ない数になっています。そこで、心筋梗塞死亡率と女性ホルモン酷似物質のイソフラボン摂取量の関係を調査したところ見事に関係していることが判明したとのことです。

その理由は次のように推測されます。イソフラボンは血中で血管を裏打ちしている内皮細胞の遺伝子に働きかけて気体の一酸化窒素(NO)を発生させる。これにより血管が拡張し血液もサラサラになって血栓ができにくくなり、血圧も低下することになります。

さらに、イソフラボン多寡はがんの死亡率とも深い関係にあります。特に顕著なのは性ホルモンが関係する乳がん前立腺がん。それだけでなくすべてのがんの年齢調整死亡率とも関係しています。イソフラボンにはがんの「血管新生」を抑える作用があるようです。さらに、さらに骨粗しょう症も予防します。また、大豆にはイソフラボンのほか、人が接種した塩分の害を打ち消すマグネシュームも豊富です。

1995年に米国食品局(FDA)は一日25gの大豆たんぱく接種によって心筋梗塞のリスクを下げることを認めています。これは、納豆1パック半、乾燥大豆にすると60gに相当。塩分増やさずに食べるには蒸し大豆、茹で大豆がおすすめ。野菜や魚と合わせる。ヨーグルトにもスプーン2杯ぐらいのきなこをいれ、じゃことかハチミツと一緒にするのも推奨の一案。